小川顕三

廣畑 今回、ご紹介させていただきます小川顕三さんですが、御年83歳になられます。信楽焼の陶芸家は、ヒロ画廊では初めてのご紹介です。この道60年のキャリアがおありですが、一日に大体ですけれども、作業されてとなると、どれぐらいの時間になりますでしょうか。

小川 朝の9時から夕方4時まで作業しています。仕事がなにより好きですし、体が資本のうえ、好きでないと続かない仕事でもあります。絶えず工房に入っていますから、寝ていても陶芸のことばかり頭に浮かんできてしまいます。朝の4時に起きて、少し醒めてくると、作りたいモノの形が浮かんできます。息子からは早起きが過ぎるなんて呼ばれていますが……性分としてじっと出来ないたちですね(笑)。

廣畑 そのイメージのまま、工房に入られるのですか?

陶芸家 小川顕三

小川 入る前に、今日と明日の予定を書き記しています。そうすると気持ちよく仕事が出来ますので、大事な作業やね。ただ漠然と1日を過ごして仕事をするんじゃなくて、毎日これはする、明日はこれを、来週は……と、きっちりきっちり進めていくと、私の場合はスムーズに流れていきます。作業途中であっても4時になれば切り上げて帰っています。毎日の作業ですので、長続きせんことには良い仕事にはつながりません。

廣畑 ご自分のペースをとても大切にされているように感じます。そもそもですが、作陶のきっかけというのは?

小川 若い頃に器を作り出したきっかけですが、(北大路)魯山人に魅了されたことでした。地元・信楽のあたたかい土肌と、京都の薄手のきれいな器をミックスした焼き物を作りたかったんです。

廣畑 小川さんの作風は信楽の従来の味わいが色濃い一方で、同じく陶芸家で息子さんの小川記一さんはシンプルで美しい形を追求されています。

小川 時代や世代によって、受け容れられる作風は違いますからね。自分の場合は、器は着物の衣装のようなものと考えています。装飾過剰にならないように……主役は器に盛る料理だったり、生ける花だったりするわけです。作陶スタイルとしては、最初は、ごちゃごちゃしたものを作り出していくんですが、少しずつそぎ落としていって、良い具合の所で、ストップしています。

廣畑 この前寄せていただいた際に分けてもらった酒器ですが、私は普段は下戸なのですが、少しづつ飲みたくなる不思議であたたかい魅力を醸し出されています。実際手に取ってもらって、こういう巣ごもりな世相ですから、ご自宅でじっくり使っていただきたい作品ばかりです。

小川 どんな展覧会になるか、楽しみやね。

ヒロ画廊 代表 廣畑政也

[略歴]
小川 顕三(おがわ けんぞう)
1938 名工小川青峰の息子として信楽に生まれる
1957 京都府立伏見高等学校 「窯業科」卒業
1957 株式会社菱三陶園 入社
1959 京都市立工芸試験所「陶磁科」2年終了
1961 県立信楽職業訓練所「陶磁科」2年終了
1968 「日芸展」通産大臣賞受賞
1972 「日芸展」読売新聞社賞受賞
1979 信楽陶芸展 優秀賞
1980 日本伝統工芸近畿支部展 入選
1981 横浜高島屋 父子展
1993 (有)小川顕三陶房を設立
2007 信楽焼伝統工芸士認定
2014 「小川顕三陶房」甲賀ブランド認定
2015 料理雑誌「四季の味」主催<春の陶器展> 於 日本橋高島屋

緋彩掛分け俎板皿

信楽麦藁手徳利(左) 信楽麦藁手ぐい呑(中) 信楽麦藁手6寸皿(右) 

信楽麦藁手盛鉢

灰カイラギ茶盌